▼『無印良品は、仕組みが9割』
少し前に『無印良品は、仕組みが9割』という本が話題になりました。よい本だと思います。そのためでしょうか、これを業務マニュアル作成の参考書にしようとする方が、何人かいらっしゃいました。
現在、業務マニュアル作成の本で適当なものが、なかなか見当たりませんから、この本に飛びつくのはわかります。この本には、業務を担当する人たちがマニュアルを作っている様子が書かれています。
実例として、参考になる点があるかもしれません。しかし、気をつけないといけないことがあります。
▼トップダウンとボトムアップ
業務マニュアルの中には、中核的なものと、そうでないものがあります。私の師匠の杉浦和史がしばしば言うように、ヴィジョンはトップダウン、アクションはボトムアップということを考える必要があります。
無印良品は、とても働きやすいよい職場だという調査結果が出ています。さまざまな工夫を凝らしていることでしょう。きちんとしたビジネスモデルを組み込んだ、総合的な業務の仕組みが出来上がっているはずです。
そういう中の一つの仕組みとして、担当者に業務マニュアルを作ってもらっているのでしょう。ボトムアップの一つだろうと思います。
▼相乗効果を生む仕組み
正社員が1割程度の会社のようですから、現場に十分な権限を持ってもらうのは合理的です。とうぜん、会社のビジネスモデルにあたる大枠は、会社側の責任で決めなくてはなりません。ヴィジョンはトップダウンです。
現場の人たちは、自分たちに与えられた範囲の中で、よい業務が出来るように工夫を凝らしています。人は、創造性を発揮することが好きです。上から標準化したマニュアルを与えられるよりも、自分たちで考えて働ける職場の方が居心地がよいはずです。
現場の人たちがノウハウをためながら、仕事を決めていくことは、会社にとっても非常に役に立ちます。お互いに、よい効果を生んでいることが伺えます。
▼業務マニュアル作成のモチベーション効果
かつて日本で行われていたQCサークル活動について、モチベーション効果を持つものだと評価する論文を、ジュラン博士が書きました。一時期、QCサークルは盛んでした。最近は、かつてほど行われていないようです。
いま、かつてのQC活動に取って代わるものがあるとしたら、現場の業務マニュアル作りだろうと思います。これがスムーズに行くためには、ビジネスの大枠を記した基幹の業務マニュアルをしっかり作ることです。これが大前提になります。
基幹の業務マニュアルがきちんと作られているなら、現場での業務マニュアル作成もうまく行くことでしょう。言うまでもなく、『無印良品は、仕組みが9割』は、基幹の業務マニュアルの作り方を書いた本ではありません。若干の注意が必要です。