▼5つの基準
たくさんの情報をどうやってまとめたらよいのか、これは難しい問題です。この問題について、リチャード・ワーマン『情報選択の時代』を参考に考えてみたいと思います。この本で、リチャード・ワーマンは、情報を組織化する基準として、5つをあげています。
(1)カテゴリー、(2)時間、(3)位置、(4)アルファベット、(5)連続量…です。
このうち、(4)のアルファベットは、日本で言えば、50音準ということになりますね。辞書や索引を作るときの基準になっています。この5つを考えるとき大切なことは、客観的な基準になるものと、主観的なものにならざるをえないものとに分かれるという点です。
ワーマンが、この点をもう少し強調してくれたらと思います。情報を組織化する基準が、たった5つだけだと知って感動しましたと言う方もいらっしゃいました。そうでしょう。ただ、それだけの認識で使ってしまうと、文書作成の際、弱点になる可能性があります。
▼カテゴリー分類は個性的
ワーマンの最初に提示した項目は、「カテゴリー」です。文書を作るときに、カテゴリー分類を使うことはよくあると思います。しかし、注意すべきです。カテゴリー分類というのは、客観的なものはありません。どうしても主観的なものになりがちです。
図書館の本の分類が、0から9までの10分類になっているのは、ご存知でしょう。しばしば変更を加えながら、これを維持しています。分類の固定化によって、カテゴリーを維持しています。
分類の固定化がなかったらどうなるでしょうか。私たちの本棚を考えてみればわかるはずです。各人が熟慮して自分の利用しやすいように本を並べても、同じ分類にならないはずです。ですから、図書館では、「日本十進分類法」にそって整理します…と決めなくては、混乱します。
子供の課題作文に、引き出し作文というものがあります。大きな引き出しの中に、たくさんの文房具が入れられています。それらを分類して作文を書くのです。その結果、その子供の個性がわかるようになっています。個性を見る作文ですね。
カテゴリー分類はよく使われますが、個性的であるということを忘れて使ってしまうと、弊害が大きいということです。十分に注意して、わかりやすい概念を最小限に利用すべきです。作成者独自のカテゴリーを使うと、文書がわかりにくくなりがちです。
▼セット型・メニュー型・レシピ型
一番ベーシックな情報の組織化の方法は、TPOでしょう。「いつ・どこで・どんな場合に」という基準に従うものです。かつてはTPOにそった文書にするように、注意があったはずです。最近は、乱れてきていますが、現在でも一番安定した基準です。
箇条書きをまとめていくときに、まず最初に、TPOにそって分けていくと、うまくまとまることが多いはずです。リチャード・ワーマンの5つの基準に感動する前に、まずTPOから始めましょう。
ワーマンのいう基準のうち、(2)時間と(3)位置に加えて、「場合」を組み合わせています。私は、この組織化方法を「セット型」と呼んでいます。1つの基準だけで組織化するのではなく、組み合わせて情報を組織化する方法です。
この他に、主なものはあと2つあります。料理のメニューのように同類同列を並べる「メニュー型」。もう一つは、料理のレシピを書くように手順を時間軸に沿って並べる「レシピ型」です。
実際の文書を作るときには、このセット型、メニュー型、レシピ型で考えたほうが、よくまとまります。