■業務改革(BPR)の次にくるもの:業務マニュアルとの関係

 

1 業務の設計と業務の構築

業務は、ご存知の通り、源流のビジネスモデルから実際の業務にいたるまで、いくつかの段階を経て成り立っています。まず第一に、アイデアの段階にあるビジネスモデルを具体的な業務にするための業務設計(Architect)が必要になります。

業務設計によって、ビジネスモデルが整備されることになります。それを業務に具体化するために、業務の目的・業務の品質を明確にし、手順(プロセス)を決める段階になります。ここまで来れば、業務が回り始めます。業務の構築(Build)と呼ばれる段階です。

この業務構築の段階において、各業務のスタートからゴールまでのプロセスが決められることになります。通常、このプロセスの中に、業務システムが入り込んできます。どのようにシステムを利用するか、この点も問題になります。

定型性の強い業務は、業務システムが担ってくれますので、人間が行う業務は、厳格なプロセス設定がないものが拡大しつつあります。大枠を守れば足りる業務の場合、業務の目的・業務の品質が、より問われることになります。

しかし、業務の構築段階に達しても、実際に運用してみないことには、業務プロセスが安定化しません。業務プロセスを、どこまで標準化するか、業務の目的・業務の品質をどこまで明確にできるか、これらは実際の業務を行いながら修正していくことになります。

 

2 業務改革の定番の手法:BPR

新しい業務形態を案出するときには、はじめから業務が標準化されていることはありません。運用しながら修正し、安定化してきます。こうなってはじめて標準化ということも可能になってきます。

一方、業務システムが導入できる業務は、一定以上に成熟化していて、標準化できる業務であるといえます。このとき、現在行われている業務をそのままシステムに載せるのではなく、業務のプロセスを見直す必要がでてきます。

安定した業務をシステムに載せる場合でも、業務プロセスを見直すことは可能です。多くの場合、一業務のスタートとゴールは変更せず、業務プロセスのみが見直されます。プロセスに焦点を当てて業務改革をするのが、BPRということになります。

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、1990年から行われてきたものです。業務システムを構築する場合にも、現状の業務を聞き取り、確認をし、さらにプロセスの見直しを行ってから、業務システムを設計するのが本来の姿であろうと思います。

継続してきた業務の場合、一般に業務のスタートとゴールが決まっていて、それが変わりませんから、プロセスを見直しても、業務が不安定化することはありません。安定的に改革が進められるため、BPRは業務改革の定番の手法となりました。

 

3 業務改革(BPR)の次にくるもの

ここへ来て、業務マニュアルの相談が切実になってきています。いわゆる業務改革を行うためというお話なのですが、しかし、BPRを行いたいというのではありません。もう一度、ゼロベースで考える必要があるというお考えなのです。

あえて言えば、業務改革の先の、業務の創造というものでしょうか。業務を大幅に変えることと、安定性を保持することを両立させようとしています。BPRを中心とした業務改革を行いながら、別の業務を創造して、優位性を確認しようというものです。

業務変革とも呼べる非連続な方法をいきなりとろうとする人もいるのかもしれません。しかしお話を聞く限り、多くの日本企業のかたがたは、安定性を確保しながら変革をなそうとしているように思います。

新旧の業務方式の競争による検証をしながら、新しい方式へと移行させていく過程を踏もうとしているようにみえます。パイロットプラントを意識的に作っていこうとしている…と言えばよいのかもしれません。

業務の場合、運用してみないと実際のところ、効果がよくわからないということがあります。意識的に新しい方式を創造していく仕組みがないと、あらたな業務に変わっていかないでしょう。こういうとき、業務マニュアルは使えるツールだろうと思います。

ここで想定されるのは、標準化された作業手順を重視する旧来の業務マニュアルではありません。業務の目的を明示し、あらたなゴールでの業務品質を明示し、業務の大きな流れを書いていく業務マニュアルになります。

業務マニュアルを作る目的が、業務改革(BPR)をすることから、さらに次の段階に進んできたようです。業界でも強い会社ほど業務マニュアルへの関心が高まっていることからも、それが裏づけられているように思います。

 

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