1 体系と体系的
先日、体系的廃棄という言葉が出たときに、どうも体系的とか体系化というのがよくわからない、と言う人がいました。「体系的廃棄」の場合、「捨てる仕組み」というべき概念だろうと思います。体系的と言われると、たしかにわかりにくいかもしれません。
体系になっている状態とは、全体の構造に秩序があるということでしょう。この場合、個々のものが仕組みになっているのに加えて、それらが全体の秩序に基づいて、まとまりを持っている、ということだろうと思います。
小さな範囲を扱う場合、仕組みになっていたら、「体系的」という言い方をしてもよさそうです。ただ、「的」という言い方が示すように、体系とは違うというニュアンスがあります。そのあたりが混乱を招くのかもしれません。
2 体系的と体系化:英語では…?
「体系的廃棄」と言ったのは、ドラッカーです。「現在行っていることの廃棄は体系的に行わなければならない」という上田惇生訳の原文を確認してみると、“To abandon what?”and“To abandon how?”have to be practiced systematically. です。
“systematic”あるいは“systematically”が「体系的」と訳されています。組織的、系統的ということです。「仕組み」という言い方がしっくり来ます。一方、「体系化」という場合、“organize”になっています。編成すること、構築することです。
“They will have to learn how to organize information as their key resource.”は、「それらの情報を主たる資源として体系化する方法を知らなければならない」という上田訳になっています。おなじ「体系」がついても、別の概念だということです。
3 ミッションと体系化
業務を体系的に行っている場合、業務を行うルールがあること、仕組みになっているということになります。業務マニュアルを作る場合、たんなる業務の手順を書くのではなく、手順が合理的なルールになっているのなら、体系的な業務になっているといえます。
一方、業務の体系化という場合、業務を構築するということになります。実際に運用できるような形式にまとめ上げるということです。このとき、全体を束ねる価値基準が重要になります。それが、ミッションとも呼ばれる統一的な価値基準です。
形式的に業務マニュアルを作っても、なかなか成果の出ない例があります[定着する業務マニュアル]。何のための業務なのか、whyを問うことが不可欠です。業務マニュアルを作るときに、価値基準の要素を入れておくことが必要だということになります。
価値基準ですから考え方が重視されます。その基準があれば、各部分をすべて積み重ねなくても、自分達が関わっている業務の方向性が見えるようになっているということです[業務マニュアルとミッション]。こういう状態・形式が体系化ということになります。
(⇒「体系的」と「体系化」 2/2 )