1 業務マニュアルの要件
業務マニュアルを機能から見ると、組織から業務従事者に向けて、業務のかたち・指針を示すものである…と言えそうです。業務作業の標準化手順を書いたものを指して、業務マニュアルという見方もありましたが、これでは、あまりに狭い概念になります。
業務のかたち・指針を示すために重要な役割を果たすOJTも、業務マニュアルと考えるべきでしょう[業務マニュアルの概念1]。業務マニュアルと呼ぶには、OJTの実施方法について、プログラムを作って組織で検証していることが要件となります。
たとえばファストフード店のアルバイト店員さんが、業務を身につける場合、紙のマニュアルよりもOJTの方が効果的なはずです。OJTのプログラムがしっかり作りこまれているならば、このOJTプログラム自体が業務マニュアルだと言えます。
2 裏づけとなるビジネスモデル
店舗の運用に関して、当事者たちに運用マニュアルの改訂に参画してもらい、会社側がよいものを選択してお墨つきを与える仕組みを作ったのが、MUJIGRAMの事例でした。自分達の業務を自分達で作れるというのは、魅力的だろうと思います。
店舗の運営を担うのは、いわゆる正社員以外の人たちです。しかし、自分達が関わって決めたものならば、納得できるでしょう。実際、居心地のよい職場と評価されているようです。作業の目的が定義され、図つきのわかりやすい記述なら有効に使われるはずです。
ポイントとなるのは、こうしたビジネスモデルを作り上げた点です。1割しかいない社員が各店舗の運営を直接行うわけにはいきません。社員ではなかなか思いつかないノウハウを、待遇条件で落ちる人たちに、次々出してもらうには、どうしたら良いでしょうか。
3 業務改革のツール
無印良品で働こうとする人は、無印のお店で買い物をしてお店が気に入っている人が多いはずです。社員よりも、お客様に近い存在です。お店の運用に関して、お客様に近い人たちから、こうあってほしいという視点を与えてもらうことは、重要なことです。
店員さんは、店舗を運営するだけでなくて、重要な情報・ノウハウまで提供してくれる存在です。この人たちに、力を発揮してもらうために、いかに居心地のよい職場を提供するかが問題だったはずです。まさにマニュアル作りへの参画はぴたりと当たりました。
業務の設計・構築の部分、いわゆるビジネスモデルがよかったのです。チェーンストア理論がそろそろ限界を迎えています[業務の再定義:外食産業にも変化]。たんに、MUJIGRAM を参考にするだけでなく、業務の設計・構築まで再検討すべきです。
店舗での作業手順なら、わかりやすさ重視から、図入りの記述が合理的です。一方、業務を設計・構築する場合、業務マニュアルは、業務改革のツールと位置づけられます。記述は文字だけが原則です。重要な変化が起きているのは、こちらの業務マニュアルです。