1 使ってもらって役立つことが命
前回、「よい操作マニュアルとは:その判定基準」を書いたところ、ご質問やコメントをいただきました。これにお答えしようと思います。非常によい質問、コメントがありました。まず、よい操作マニュアルを一言で言うと、どういうことになるのか…?
ぱっと見て作成者側の、こう使ってもらいたいという主張があるものが良い、ということになります。この点に関して、納品物としてもれなく書く意識が強くて、強弱なく書く傾向がありましたとのコメントをいただきました。
もれなく全部書く操作マニュアルが必要な場合もあります。しかし、それは使ってもらうためのマニュアルとは違った存在です。メリハリがついていないと、弱いかなと思います。やはり操作マニュアルの場合、使って役立つことが命ですね。
2 操作には正解がある:伝え方の問題
操作マニュアルには正解がある…と以前書きました。一方、業務マニュアルには正解がない…とも書きました。この言い方は、誤解を生む表現でした。「操作には正解がある」であり、「業務には正解がない」ということです。
操作マニュアルがどうあるべきか、この点について、正解はないのです。操作の正しさがありますから、その正しさをいかに上手に正確に伝えるかがポイントになります。どれだけの分量なら、受容してもらえるか、そのあたりまで考えないといけません。
受容まで考えると、内容のメリハリが必要です。たくさんの機能の中から、これをこう使ってもらえたら一番恩恵を感じられる…というものが提示できたら、利用者にとっても便利でしょう。そして、操作マニュアルが、自分達の強みを見せる手段にもなります。
3 標準的な使用法の作り方
操作マニュアルの前提として、製品やサービスの標準的な使い方を提示することが必要です。これに加えて発展的にユーザーの目的に対応した項目をつくることも重要です。これは原則です。しかし、両方が必須なのでしょうか…? そうではありません。
「これならわかる パソコンが動く」の場合、標準的な使い方を示しただけでした。それでも、コールセンターへの電話量が激減しました。標準的な使用だけでも、十分満足できたのだろうと思います。それ以外の使い方があまりなかったようです。
この標準的な使い方をどう作るのか、妥当か否かは、結果からの判断ではないか…とのご指摘がありました。その通りです。操作マニュアルの利用され方を予測するのは困難です。結果から判断するしかありません。ただし全部作ってから判断するのは危険です。
そのときどきでモニターをしてもらうことが必要です。サンプル調査で十分です。信頼できる少数者から、詳しくお話をお聞きすることによって、どういう説明の仕方なら使いやすくなるのか…を推定していきます。推定ですから、おかしかったら修正が必要です。
4 作成者の中に異分子が必要
操作マニュアルについて、「製品作成者=操作マニュアル作成者」のパターンが多いとのコメントがありました。これはあまりよくないことです。イコールで結ばれることは、リスクがあります。違った見方をする異分子が必要です。
製品作成者が操作マニュアル作りに関わるのは当然ですが、製品作成者しか操作マニュアルに関与していなかったなら、ユーザーが見えにくくなります。モニターをしてもらう人は、できるなら製品作成者でない人から見つけたいものです。
製品作成者でない人の意見が刺激になり、ユーザーの視点に近づいていけるはずです。操作マニュアルは、使ってもらうことが重要です。使いやすさを推定するだけでは、正しさが判定できません。やはり実際に使った人の反応から発想する方が安定しています。