1 飛びぬけた存在だった青木昌彦
プロジェクトを考えるときの指針としてきたのが、青木昌彦のタテとヨコの融合の話でした。このことにふれたことがあります。訃報を聞き、またタテとヨコを考えています。早くから飛びぬけた存在でしたから長い期間の活躍でした。しかしまだ早かったですね。
青木の『移りゆくこの十年 動かぬ視点』にある「タテとヨコ」と10年後の追記は、今後とも読み返されるべきものだと思います。青木はそこで、現場情報をタテに流すアメリカ型とヨコに流す日本型の融合を、湾岸戦争の「砂漠の嵐」作戦に見ています。
必要な知識をどう活用したら良いのか。有効に活用するための仕組みとしてタテとヨコの融合に期待しています。(1)指揮系統の簡略化と、(2)指導者は戦略的な決定に集中し、それ以外の詳細な決定を現場に権限移譲することが必要だという指摘でした。
2 役割分担と検証
組織が複雑化すると、決定が遅くなります。大きなプロジェクトを成功させるためには、指揮系統を簡略化することがいっそう重要になります。指揮系統の簡略化のためには、決定の重要性に価値をつけて、重要な戦略的決定に意思と力を集中することが必要です。
戦略的な決定以外の案件は、現場の判断に任せることになります。情報と知識の分業化を進めるということです。ただ、この役割の分担を決めるのは簡単ではありません。役割を分担するには、検証の仕組みを構築しておかなくてはならないからです。
役割を分担して権限委譲をしたからといって、責任を現場に押しつけるわけには行きません。リーダーは全体を見て、判断しなくてはなりません。おかしいと思ったら修正しないといけないということです。その責任があります。そのために検証の仕組みが必要です。
3 全体最適との合致
情報を専門家に集約して専門家がすべてを決断するタテ型でなく、情報を現場に流して状況に合わせて現場が計画を変更するヨコ型でもなく、両者の融合が求められるのです。具体的にはどういう形態になるのでしょうか。
おそらく二つのことが言えそうです。(1) まず現場の人の知識・経験を十分に利用すること。原則として現場のことは現場の人にしてもらうこと。(2) 現場に権限を委譲すると全体最適に合致しないリスクが生じるものは、リーダーが決定を下すこと。
検証の仕組みとは、現場の決定が全体最適に合致しているか…をリーダーが検証するものです。青木のいうタテとヨコの融合には、全体像を構築する優秀なリーダーがいなくてはなりません。現在の日本の組織よりもリーダーに権限が集中することになりそうです。[追記]