1 組織には目的が必要
マネジメントで、ビジネスの目的を問題にするのは、なぜでしょうか。組織の目的とか使命とかミッションとか、言い方はいろいろありますが、これらを組織が自らに対して、繰り返し問いかけるべき理由はどこにあるのでしょうか。
もともと組織には営利・非営利を問わず、地縁・血縁で結ばれた集団と違って、構成する人達を結合するための目的が必要でした。なぜ人は組織を構成しているのか、その理由が必要だということです。あえて組織を構成する利益、つまり成果が求められます。
人が個人でことをなすよりも組織でことをなすほうが、一人当たりの成果が大きくなることが必要だということになります。そうならなかったらマネジメントは失敗です。では、なぜ目的を繰り返し問うべきなのでしょうか。問題は繰り返し問うべき理由です。
2 目的の発見
繰り返し自らに、目的を問い続ける必要があるのは、組織の目的をどう設定すべきかについて、正解がないからでしょう。自分達の目的が正しいという保障は、どこにもありません。繰り返し問い続けないと、まちがう危険があります。
「汝自身を知れ」という言葉があるように、個人であれ組織であれ、本来自己は未知であり謎であるといういうべきものでしょう。こうした前提に立つならば、目的が最初から明確で、一貫して変化しないとは言えなくなります。
山崎正和は『自己発見としての人生』の中で、人生が自己実現の一本道のように見えていたのは、性急な近代化と産業化を進めた一時期の例外だったのではないか、と書いています。この時期、進むべき方向について、社会に共通認識があったということでしょう。
外の基準に合わせることが当たり前だと思っているならば、あえて目的を自らに問う必要はありません。目的を自らに問うということは、内なる基準をもとに成果を考えるということです。それには自己発見が必要だということになります。
3 組織の独自性の源泉
組織の目的を繰り返し問う理由には、利益や時価総額などの外の基準から見るだけでは、組織はまちがいやすく、弱くなるという洞察がありそうです。他の誰でもない自分達の目的を見出すこと、発見することによって、組織は独自性を持つことになります。
目的が成果を上げることを基礎にする以上、自らの強みについて知る必要があります。外部の環境と自らの強みを検討し、どんな領域で、どんな基準で成果を上げるべきかを問うことになります。これがドラッカーの「企業永続の理論」での主張でした。
<誰でも自分の強みはわかっていると思う、たいていが間違いである>とドラッカーは『明日を支配するもの』で書いています。間違わないために、定期的に自らを振り返って強みを見出すこと(フィードバック分析)が必要だという主張です。
『マネジメント』(名著集)には「自己実現」と訳された語句があります。原文は「achieve」です。目的を成し遂げるというニュアンスでしょう。目的は成果を上げることです。何を成果とするのか、繰り返し自らに問うことが組織の強さにつながります。