■複雑なことを説明するときの方法 1/2:文法の説明を例に

1 説明に苦労するもの:文法の解説

少し前に、受験予備校の先生方がどう英語の構文を解説しているのかと思って、参考書を読んでみました。理解しやすいように工夫しているのがよくわかりました。こうした、説明の仕方を競っているのを見ると、受験というのはたいしたものだなあ…と思います。

同時に、受験勉強があったから面倒な説明も聞く気になり、その結果、理解できたという面もあるかもしれないと思いました。この点、日本語の文法を説明する場合、そうとう苦労しそうです。こうした中で、わかりやすく説明しようと努力している人達がいます。

外国人に日本語を教えている先生方です。『日本人のための日本語文法入門』を書いた原沢伊都夫は、外国人に日本語を教えてきた先生のようです。「日本語文法」とは、外国人に日本語を話すために必要な知識を説明するための文法だそうです。

 

2 概念の明確性が一番の基礎

原沢は<論理的で矛盾のない日本語文法をわかりやすく解説>するとのこと。文を構成する成分と構文の説明箇所に「絶対に必要なパーツの組み合わせ」という小見出しをつけたところなど工夫が見られます。必須成分と構文をうまく説明しようとしたのでしょう。

成分とはパーツであり、必須成分とは「絶対に必要なパーツ」です。その必要最小限のパーツの組み合わせが「文型」になります。こうした<難しい用語>を<平易な表現に言い換え>た箇所は、専門家に<受け入れがたいもの>になるかもしれないと記しています。

わかりにくいものをどう説明するかというのは、難しい問題です。英語の参考書や日本語の文法書を読みながら、どうしたらよいのだろうかと考えます。ビジネスでも同じだろうと思います。こういうとき、一番大切なことは概念の明確性です。これが命です。

 

3 不明点を補正する措置

英文法の分野では、ずいぶん前に規範文法が確立し、学校文法とも呼ばれる体系が出来上がっています。使っている用語の概念はかなり明確になっています。したがって、受験生に向けてわかりやすく解説すれば、そのわかりやすさが学習に有効に働きます。

ところが日本語の文法の場合、日本語に即した概念でない用語が多々見られます。こういう用語は日本語との齟齬が残ります。したがって概念が明確になりません。まず解決すべきことは、齟齬をなくして概念を明確にすることでしょう。もちろん難しいことです。

原沢の努力にもかかわらず、実際の例文を前にすると、「絶対に必要なパーツの組み合わせ」という概念は、いささかわかりにくく感じます。もし完璧な概念でなかったとしても、概念の不都合を補正する措置があれば、わかりやすい説明も可能になるでしょう。

もちろん原沢はわかっています。続く項目で10の文型をあげ、<基本的なものだけで、すべてではありませんが、これだけでかなりの述語をカバーできます>と記します。しかしここでの説明は簡潔とは行かず、「絶対必要」という概念は明確にならないのです。

この項続きます。)

 

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