1 成功の秘密:誰に・何を・どう売るか
マーケティングの専門家として大企業で活躍していた人が、独立してビジネスを始めました。何をやると決めていたわけでもないのに、成功するだろうと考えていたようです。世の中のビジネスの多くはマーケティングの基礎が欠けていると見えたそうです。
新しいビジネスを当然のように成功させ、その次に始めたビジネスも成功させています。なぜなのか、その秘密をお聞きしたところ、はじめに「誰に・何を・どう売るか」だけを考えるからだ…ということでした。あっと思いました。文書の作成と同じです。
この話をプロデューサーの人に話したところ、自分も同じだとおっしゃいます。「誰に・何を・どう伝えるか」を考えて企画を立ててきたとのことでした。日本初の企画もいくつか成功させている人です。「誰に・何を・どのように」…は戦略論の基本なのでしょう。
2 Who・What・Howの戦略分析と4P
マーケティング機能として4Pと呼ばれるものがあります。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つをトータルに考えることが重要だといわれます。しかし、ここに顧客が入っていません。バランスがよくないのです。
そのため「誰に・何を・どのように」に4Pを組み合わせて考えることになります。「どんな顧客に」「どんな製品を」「どのような価格・流通・プロモーションなどで提供するか」ということになります。「どのように」の3つは、たとえばという例示です。
こうした手法は戦略分析として、アメリカでも使われているようです。清水勝彦は2007年に出版した『戦略の原点』で、戦略の分析の仕方として、<Who(Customer)、What(商品、サービス)、How(Company)の枠組みでまず考えます>と言っています。
3 大きく考えるための手法
清水は、<商品、サービスとは、ターゲット顧客のニーズと自社のビジネスモデルが交わったところ>に生まれると考えます。他社より<よいサービスまたは低価格>のものが提供できているかが基準です。先の本には、サウスウエストの事例が示されています。
Who (ターゲット顧客)
: レジャー顧客/ビジネス顧客
What(商品、サービス)
: 低価格のフライト/フレンドリーサービス/時間に正確
How (ビジネスモデル)
: 追加サービスなし/737だけ/空港の選択
/迅速な積み下ろし、発着/2都市間を結ぶ短距離限定
/フレンドリーな企業文化
清水の作った一覧は参考になると思います。大枠を決めるのに、「誰に(Who)・何を(What)・どのように(How)」がどんな感じになるか、手がかりになるはずです。冒頭に紹介した社長さんの場合、もうすこしシンプルな形式で考えるようでした。
こうした枠組みは、文書を作るときも同じです。業務について考えるときも、基本は同じです。きわめてシンプルな手法だけに安定しています。大枠を考えるということは、これだけをまず考えるということです。私の場合も、ここからはじめることにしています。