■アンチ一般化理論としての「構造-機能分析」:マネジメントの基礎理論

1 社会学の一大運動:「構造-機能分析」

「構造-機能分析」は1960年代から70年代に議論され、その後、挫折した社会学の理論といわれます。橋爪大三郎は『小室直樹の世界』で、<構造-機能分析は、行動科学運動、経済学の新古典派的総合に対応する、社会学の一大運動であった>と書いています。

志田基与師は先の本で、この理論は<社会科学統一のプラットフォーム>として<構想されてい>たと語ります。機能とは<達成すべき目標>であり、<いくつかの機能要件が社会構造を制御する、社会構造はこれは相互連関で成り立っている>ということです。

ビジネスでもなじみのある考えでしょう。機能とは目標であり、目標達成のためにはいくつかの要素が必要です。要素を構造化することによって機能を満たします。このとき「機能要件」が構造を制御するとのこと。「機能要件」はITの用語にもなっています。

 

2 理論は制約され、原因は単一ではない

志田は続けます。社会において目標が単一であるというのは現実的でありません。目標は複数になります。これらの複数目標が<それぞれ異なる要求を社会に対して行う>のですから、<一個の原因>が<すべてを導き出すということはない>というべきでしょう。

また、<複数の機能要件を満たす、複数の機能的要求に社会システムが応えるように制御されるというのは><極めて限定的な範囲に理論を制約する>はずです。一般的なプラットフォームとして<作動するという保障がどこにあるんですか>と言いたくなります。

社会全体を説明する一般理論など存在しないのです。そして社会に起こった現象に対し、一つの原因で説明しようとするのも不合理でしょう。これはビジネスにおける成功や失敗についてもいえます。私たちはいまだに原因を一つに収斂させようとしがちです。

 

3 意義のある理論不成立の確認

経済学で一般理論化が可能だったのは、経済学の特殊な前提によるものでした。橋爪は言います。経済学では、<人間と人間のあいだの関係を、貨幣を媒介とする交換関係に、抽象(捨象)する>ことができました。<貨幣は、数量>ですから数量化できます。

さらに<経済的な富は、一元的な尺度で測れ>ます。<価値が一元的>だということで
す。こうした経済学の基礎を社会やビジネスにあてはめるのは無理でしょう。<社会学には、貨幣にあたる媒介項がない>ですし、<価値(ないし目的)が一元化>できません。

こうした説明を聞くと、社会学の「構造-機能分析」理論が破綻するのは当然のことだと思うはずです。ここで大切だったのは、一般理論化には無理があるということの確認でした。一般理論化や普遍主義の考え方は、ビジネスおよびマネジメントになじみません。

一般理論化をやめ、個別ケースに補助線として使える理論と位置づけるべきなのかもしれません。アンチ一般化理論の事例ともいえるでしょう。ドラッカーは著書で、原因は一つではない、複合的だと主張しています。現実は一つの物差しでは測りきれないのです。

参照: [小室直樹の勉強法:論理構築の方法]

 

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