1 街灯の下で教科書を読む人たち
先日、発展途上国の学生達が街灯の下で教科書を読んでいる映像を見ました。物理の教科書を音読しているのです。理解が伴わないので、成果は少ないとのこと。しかし、教師不足のこの国で他に方法がないということでした。これはすごい、立派だと思いました。
こうした学生のために、講義をDVDに録画して見られるようにしたところ、実力をつける学生が出てきたそうです。教育機会のなかった農村から毎年数名ずつ一流大学に合格するようになったのですから画期的です。これを見ながら別のことを考えていました。
DVDの授業よりも、解説つきの教科書を提供するほうが効果的かもしれないという思いです。解説のついていない答えだけの物理の教科書では理解は困難でしょう。しかし丁寧に解説された教材が提供されたなら効果はどうだろうか、そんなことが気になりました。
2 情報量の少ない人気の教材
日本ではたくさんの参考書が出版されています。大いに利用すべきでしょう。公務員試験の受験生の場合、地理の勉強をほとんどしていない人が一定数います。どうしたらよいかという質問に対する答えは、自分がよいと思う受験参考書を読むこと…です。
よくできた参考書はビジネス人にとって内容も、教材の作り方も参考になります。この間から気になっていたので、最近の地理の参考書について少し調べてみました。講義風の教材が人気を集めています。読んでみて驚きました。情報量が少なすぎるのです。
講義の会話を効率的な記述にした本を期待したのですが、残念なことでした。一文の途中で次々改行されるメールのような記述形式です。重要項目は入っています。さらっと読むのによいでしょう。しかしこれで十分な理解ができ、実力がつくのか不安になります。
3 活字教材の重要性
熱心に学ぼうとするアジアの学生の姿を見ながら、日本の恵まれた学生と彼らの使っている何となくふやふやしている教材が気になりました。日本は弱体化してきているのでしょうか。もう少しきっちり書かれた骨のある本がないのだろうかと思います。
まだ調査不足ですから、大人が読んでもよく出来ているという教材が見つかるかもしれません。そう願います。このままだとアジアの勉学熱心な学生たちに追い越されてしまうかもしれません。同時に、かつての日本人が作ったレベルの高い参考書を思い出します。
もし少人数でなく国全体の学生達に教育を提供しようとするなら、教師の問題とともに、よくできた活字教材作りが重要になると思います。自分のペースで、考えながら読んでいける…ということが活字教材の強みです。学習の大きな支えになるだろうと思います。
社会に出てから勉強する場合、学生時代よりも活字教材に頼ることが多くなるはずです。もちろん学ぶ意欲の薄い学生でも読めるように工夫した教材に、存在価値はあります。しかしそれだけでは物足りません。街灯の下で教科書を読む人達に負けてしまいます。