1 集中する訓練の基礎にあるもの
3ヶ月一つのテーマに取り組めば、かなり大きなことができることは多くの方が経験していることと思います。後期の授業が始まって、前期の数ヶ月で一気に能力を上げてきていた若者たちが戻ってきました。でも、簡単に前期の勢いは戻ってきません。
やはり大きいのは集中とその継続なのだと思います。講義で成果をあげようとするなら、範囲を広げないほうがよいことは知られています。研究と違って知識の習得と応用問題演習レベルですから、一定範囲をしっかり理解して練習すればたいてい対応できます。
あとは対象への集中ができればよいということです。数ヶ月かけて、集中する習慣をつけてきました。問題に取り組むときに、いかにすばやく集中できるかが勝負です。それが崩れてきています。長い休みがあって、道具の使い方の感覚が鈍ったのでしょう。
2 道具を使いこなせること
学習するときに、私たちは何らかの思考の道具を使います。基礎訓練といわれるものがベースにあって、それを使いながら、もっと複雑なことを処理していきます。正解があるものも正解がないものも、こうした形式は同じです。道具を使って処理をするのです。
掛け算九九を知っていれば、もっと複雑な計算ができます。それと同じことだろうと思います。道具の使い方が鈍ってしまったら、そこを解決しない限り、その上に築かれる発展的な問題に対応できるはずはありません。道具を大切にすることが重要です。
基本に返れということは、この道具をきちんと使いこなせるようにしておけということでしょう。この道具が使えないと、その先のことがつかえてきますから、その結果として集中が上手くいかなくなります。学習の基本に、思考の道具があるということです。
3 3つの学習プロセス
何かを習うとき、あるいは教えるとき、どういう方法が身につきやすいのか、原則は決まっているのかもしれません。「やってみること」、「お手本を見せること」、「それをみてもう一度やってみること」の3つのステップがありそうです。
自分の実力そのままにやってみるしかありません。自分が正しいと思ったとおりに、あるいはそれができない実力のままに、やってみることで自分の状況が見えてきます。自分でそれを測定して、その測定値を基に修正ができたらプロなのでしょう。
自分の実力を測定するために、まずやってみることが必要です。それを指導者が評価します。それを伝えるとき言葉が第一の手段になります。それでも伝えきれないとき、指導者がお手本を見せることになります。それを習う側が理解できるかどうかが問題です。
理解できたなら、それを使えるかどうか確認する必要があります。お手本を見せられた後に、それをもう一度やってみるのはそのためでしょう。お手本というのは目標です。こういうことを意外に自分も忘れていると、学生を見ながら感じていました。