■語句の選び方と並べ方・読みづらさの要因:斎藤兆史『英文法の論理』を参考に

 

1 選び方と並べ方の図式

斎藤兆史の『英文法の論理』には、「文法をタテとヨコで考える」という「選び方と並べ方」の説明があります。これは文法に限らず、かなり使える考え方です。ローマン・ヤコブソンという構造主義言語学者の考えた図式に基づいているとのことでした。

ヤコブソンが用いたのは「選択軸」対「結合軸」という図式であり、これが「タテとヨコ」、「選び方と並べ方」の対比です。斎藤は[洋食のコース料理のメニュー]を例に説明します。「前菜-主菜-デザート」というのが一般的なメニューの形式でしょう。

前菜に何を選ぶか、主菜をどうするか、デザートは何か、それぞれの選び方がコース料理の内容を決めます。同時に、何を選ぶにしても「前菜-主菜-デザート」という並べ方は変わりません。選択軸(選び方)と結合軸(並べ方)があるということです。

 

2 語句のむずかしさを解消する工夫

語句をどう選ぶかという問題と、それをどう並べるかという問題は、[「読みづらさ」の質の違い]にもつながります。使われる用語が難しくて読みづらいと感じる場合がある一方で、文の組み立てが複雑で読みづらく感じさせる場合があります。

文法を説明するときでも、定義がなされている文法用語を使うと説明は楽です。ところが、その概念を知らない人にとっては語句を調べないと意味が取れないことになります。こういう場合、辞書を引き引き解説など読みたくないということになりがちです。

このあたりが難しいところでしょう。一般的に使われる言葉を使うと、不明確な概念になりがちで、正確性に問題が生じる可能性があります。こういうとき、一般的な用語を使いながら、ここでの意味はこうであると、簡潔に正確に定義することが有効です。

 

3 「型」を体に刻み込むこと

一般的に通用する定義でなくても、ある文書内で使うときに、ここでの意味はこうであると上手に定義できたら便利です。会社での俗称であっても、ここでの意味はこうだと説明するなら、マニュアルのような反復して利用する文書でも、使って構わないでしょう。

使われる用語に基づく読みづらさには、丁寧に対応するしかありません。工夫が必要になります。斎藤も、英語を書くときに単語同士の相性を見抜く感覚が大切だと言い、あるまとまりをGoogle検索して、ヒットするかどうかチェックする方法を紹介しています。

一方、語句の並べ方による読みづらさは、解消すべき義務といえるでしょう。組み立てが複雑でわかりにくい文は、修正が必要です。コース料理のメニューのように、決まった型に入れ込むことが理解を容易にします。言いたい内容に合った型に入れ込むことです。

[ある基本構文をさまざまな変奏を施して反復練習する学習法を「提携構文練習(パタン・プラクティス)」と言う]そうです。[「型」を体に刻み込むのに効果を発揮する]とのこと。日本語でも「型」が体に刻み込まれていないと、読みづらい文になります。

 

英文法の論理 (NHKブックス)

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斎藤 兆史
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