■業務マニュアル作成の前提:全社の業務マニュアルを作る場合

 

1 全社の業務マニュアル作成

業務マニュアルを作ろうとするときに、ときどき問題になることがあります。業務マニュアルがない組織が、長期計画で全社の業務マニュアルを作ろうとする場合に、どこから手をつけたらよいのかわからないという問題です。わりあい多くあるケースです。

お話をお聞きすると、ささやかに手をつけてはいても、まだ完成したマニュアルが一つもないというのがほとんどです。全社のマニュアルをきちんと完成していく会社もあるかもしれません。私に相談するのは困っている人たちですから、平均値ではないでしょう。

それでも全社の業務マニュアル作成に難航していない組織は、極めて例外的な存在だと思います。業務マニュアルの作り方が変わってきていますから、当然でしょう。そして業務マニュアル作成の研修を実施したこと自体、明らかにしないのが常識になっています。

 

2 作成手順はマネジメントの問題

業務の記述が追いついていません。業務が急速に変わって、変わりながら業務を構築してきたのですから、仕方ないことでしょう。業務のプロであっても、業務を記述する方法を習得しているわけではありませんから、そんなに簡単に記述できるはずありません。

結果として、全社の業務マニュアルを作成しようと決定したものの、どうしてよいのかわからなくて立ち止まっているということになります。成功した会社の場合、どうやって全社のマニュアルを作っていったかということ自体が、ノウハウになっているはずです。

このことはマニュアルの作成というよりも、マネジメントの領域の問題だと言うべきでしょう。最初にビジョンがあります。そのビジョンを実現するために、どういう段取りを経て、どういう手順で実現するのか、それを決めるのはマネジメントの重要な仕事です。

 

3 経験を積みながら領域拡大

このことは「小さくはじめるということ」の中に書いたことでもあります。Amazon は[全てのオンライン市場を支配するというビジョンを持っていたけれど、きわめて意図的にまず本から始めた]のです。限定された領域で成功することを優先させたのでした。

業務マニュアルを作る場合も同様です。全社の業務マニュアルを作るというミッション、ビジョンを実現するために、どこから手をつけていくかという適切な順番を決めておくことが必要です。これは権限を持つ人が、指示を出すべきだということになります。

ある領域で経験を積んで、それを生かしながら領域を拡大していくことが重要です。こうした段取りがなくては成功しません。作成担当者に丸投げするケースが多すぎます。業務マニュアル作成をマネジメントの重要活動と位置づけていないのかもしれません。

逆に適切な順番で全社の業務マニュアルを作成していく計画が立てられるならば、成功に近づきます。業務マニュアルの記述の仕方や内容の方向づけも、若干のコツがわかれば、できるようになるはずです。基本的な問題を詰めることが、決定的な要因になります。

 

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