1 聞き取りが必要な場合と不要な場合
業務マニュアル講座を行ってきました。今回出席された方の半数が実際に業務マニュアルを作った経験のある人でした。いますぐにマニュアルを作らなくてはいけない人は、今回いませんでした。講義は基本的な作成の流れに沿って解説していく形式で進めました。
業務マニュアルを作る場合、たいてい自分たちにかかわる領域の業務をマニュアル化することになります。作成者が全く知らない仕事ではなくて、ある程度見えている分野での作成が普通です。こういう場合、作り方は大きく2つのパターンに分かれます。
一つは自分で行っている業務だけを記述する場合です。このとき聞き取りをする必要がほとんどありません。自分の行っている業務を記録して、それを分析し、整理していくことを通じて大枠を決め、各項目をマニュアル化していくことになります。
もう一つは、少数の人に業務のことを聞きながらまとめる場合です。その業務に関して中心的な存在の人に業務のことを聞きながら、まとめていくことになります。この場合、聞き取りがどれだけできるかという点が、大きなポイントになります。
2 どの領域をマニュアル化すべきかの検討
業務マニュアルを作る場合、成果を上げることが目的になるのは当然のことです。では、業務マニュアルによって成果を上げるためには、何が大切になるでしょうか。この場合、どう作るかに焦点を当てても成果には限界があります。もっと大切なことがあります。
どの領域の業務をマニュアル化するか…という点が一番のポイントです。マニュアル化が成果に結びつく業務を見つけることが、よい業務マニュアルを作るときの決め手になります。どう作るかの前に、どの領域の業務をマニュアル化するかが大事なのです。
業務の中で何がポイントとなるのか…ということが事前にわかっている人はそんなに多くありません。どこがポイントとなるかが見つけられる人は業務が見えている人です。実際には、成果を予想しながらマニュアル化を行い、それを検証することになります。
まだ何も手をつけていなくて、これから業務マニュアルを作っていこうとする場合、営業マニュアルから始めるのがよいかもしれません。営業成績は大きく違っていますから、仕事のできる人達の方法を一般化することは、成果に直結することが多いはずです。
どう作るかよりも、どの分野を業務マニュアル化するかが大切だと言われると、一見意外な感じもするはずです。そう感じた人でも、営業マニュアルが大切だという話を聞けば、納得するかもしれません。よい営業マニュアルを持つ会社はそんなに多くないのです。
3 成果を上げるシンプルな形式
成果を上げる営業マニュアルができた場合、あっけないほどシンプルな内容になります。10ページにも満たないマニュアルが一番成果を上げることがよくあります。逆に詳細な営業マニュアルが作られたとしても、使いにくくてあまり利用されそうにありません。
業務マニュアルに、詳細な規定を記述してもそれを実行に移せないでしょう。業務マニュアルの記述が実効性を発揮するのは、業務のエッセンスに絞った場合です。この場合、考え方やルールを示すことが重要になります。これがないから詳細な規定になるのです。
これだけは絶対に確認が必要だという内容を集めたなら、思ったほど内容が膨大でないことに気づくでしょう。極端に多い項目を絶対に守るようにと言ったところで、よほど例外的な人でない限り、すべて実行することなどできません。無理は通らないのです。
当然、ビジネスでは細かい注意が必要です。その都度、確認することは重要でしょう。しかし、それらをすべて業務マニュアルに書く必要はないはずです。毎回、同じことを確認することは少ないはずですから、マニュアルの記述の仕方も変わってきます。
指示内容が異なる場合、業務マニュアルにその内容を記述する必要はありません。「こういう場合には、事前にリーダーがメンバーに確認すること」という形式での記述になります。確認内容の形式をある程度標準化できたら、効果があります。
業務マニュアルに記述する内容は、業務の指針やルールが中心になります。業務マニュアルだけで何とかしようとしてはいけないということです。OJTや教育訓練が重要な意味を持つのは言うまでもありません。その基礎に業務マニュアルがあるということです。