1 結論が決まってから書きだすこと
文書作成講座を行ってきました。大勢ご参加いただけて嬉しく思います。今回、講義中にPCを使って文書を作成していただきました。講義時間内での文書作成というのは、時間配分が難しいものです。今回、想定していた最大の時間までかかりました。
参加された方も、セミナー側が用意したPCで作成するのは何となく慣れない感じもあったでしょう。それ以上に、作成したものを皆で共有できるようにしたことが、意外なプレッシャーを与えたかもしれません。手間取ったのは仕方なかったように思います。
ビジネス文書を書く場合、わたしたちは事前に何を書くのかを決めておかなくてはいけません。書き始めてから、結論がどうなるか見えてくるようでは困ります。言いたいことはこれですという形が決まらなくては書きだせないし書くべきでないということです。
そんなお話をしましたが、実際に制限時間のある中で書いてみるとなかなか思ったようにいかない点が出てきます。言いたいことをどうまとめるかがポイントになります。構成自体は難しいことではありません。言いたいこと、結論を冒頭に置けばよいのですから。
2 言いたいことを100文字程度にまとめる
簡潔な文書を作るためには、簡潔な表現で自説をまとめることが必要です。自説が簡潔にまとまっていると言えるのは、A4一枚の場合なら文字数で言えば、100文字程度でしょう。この文字数でわかりやすく内容のあるものにまとめることがポイントです。
ここが一番難しいところでしょう。自分の言いたいことがわかりやすく簡潔な説明になっているかどうかは、書いてみないとわかりません。書くことによって自分で検証できるようになります。こうした簡潔な結論を書くためには少し訓練が必要です。
ビジネス文書の場合、簡単にいい結論が出てこないかもしれません。いきなりいい考えが出てくるようなら楽ですがそうならないのが普通です。大切なことは簡単に結論が出せないということを自覚することだと思います。ここが苦労のしどころです。
結論はこれです…とさらりと素晴らしい答えが示せたら、それは素晴らしいと思います。実際にそれができる人も少数ながらいそうです。現在の自分にはそんなことはできないという自覚に堪えながら、できる人から学ばねばなりません。
おそらく素晴らしい考えが出せるようになるためには、それに先立って、これは素晴らしい考えだとわかることが必要になります。これはよいと思う簡潔に書かれた文章があったなら、それを大切にすべきです。これは探さないと見つかりません。
自分で書けなくてもお手本が見つけられるなら、その段階でレベルが上がっています。こう書ければよい、このレベルならよいという感覚が作られることが重要です。自分で結論をまとめるときに、こんな風にというイメージがあればずいぶん助けになります。
3 一般の人にも分かるように書く練習
今回、言いたいことを簡潔にまとめた文章をもっとサンプルとしてテキストに入れてもよかったかなと反省しました。専門領域にかかわるテーマについて、自説なりまとめが明確にできるはずだという気持ちが強すぎたかもしれません。
専門家でない人にも分かるようにという指定を入れたため、ご苦労された方がいました。簡潔に書こうとすると専門的なキーワードが入りがちです。本人にとっては当たり前すぎる用語でも、一般人では分からないということがよくあります。
用語が難しくて、その用語のために書かれたことの全体がわからないというのは、自分でも経験しているはずです。それと同じことが自分の書いたものでも起こるということです。難しいことを簡単に書くのはレベルの高い能力が要求されます。
専門的な仕事に従事する人にとって、専門領域をいかにわかりやすく説明するかということは、乗り越えなくてはならない重要なテーマです。専門家同士でないと分からない文書ばかり書いていたら、実力が飛躍しません。訓練するに足ることだろうと思います。
わかりやすい入門書が書けるのは、偉大な学者であることの証拠だとも言われます。専門を持っている人なら、一般の人にも分かるように自分の言いたいことが説明できるようにしておくべきです。一度では難しいでしょうが、何度も試してみる価値はあります。
今回、最初のところで説明した日本語の文章を書くための基本的な説明がわかりやすかったと言っていただけて、うれしく思いました。反省点は多々ありますが、一番のポイントが伝わった人が多かったようで、報われた気持ちになりました。