1 業務マニュアルと操作マニュアルの違い
業務マニュアルと操作マニュアルの大きな違いは何でしょうか。おそらく一番の違いは、業務と操作の性格の違いによると思います。業務には正解がありません。システムなどの操作には正解があります。この違いが大きな影響を与えています。
逆に言えば、業務の中でも手続き的なものは操作マニュアルの手法で作れるのです。したがって、業務といっても定型的で規格的な業務を記述しようとしたら、操作マニュアル講座でやるような手法が適していると言えます。
業務マニュアルを再定義しなくてはいけないというのは、業務マニュアルの役割が大きく変化したためです。業務がビジネスモデルと絡んでいるのは当然ですが、業務マニュアルを見れば、ビジネスモデルが見えてくるように記述することが必要になります。
そのとき記述の中心になるのは、ビジネスのプロセスとルールです。各プロセスで行う業務について、多くの場合、OJTで習得することになります。そのため必要なOJTの習得項目を並べていけば、業務マニュアルに詳細な記述をする必要がなくなります。
2 OJTの前提となる操作マニュアル作り
操作に関して、正解がありますから正解を記述することが先になります。正解の記述が操作マニュアルの内容です。何をどういう手順で操作したらよいのかを記述していくことになります。「何」と「手順」のうち、とくに大切なのは「何」の選択になります。
操作手順を間違いなく覚えて実践できるようにするためには、OJTを行う必要があります。そのためには先に操作マニュアルを作っておくべきです。操作マニュアルを作ったうえで、その中での必要領域を決めて、OJTを行うことになります。
操作に関するOJTの場合、目指すべきは、ある領域内の完全な理解です。検証のためにテストを実施する場合、合格点が満点になるというのが原則でしょう。こういうとき、どれだけの操作をきっちり覚えたらよいのか、操作の選択がとても大切になります。
操作や定型的な手続きがどの水準まで完全にできたなら、操作や業務に支障がないかを考えることになります。どこが基礎になっていて、どこが発展的な部分であるのか。発展的な機能や手続きの中でも必須のものがどれなのかを見出さなくてはなりません。
こうした操作の選択を、操作マニュアルの作成過程で行います。操作の選択と使い方の標準を決めるのが操作マニュアル作成のポイントです。これが決まっていないうちに、OJTの実施領域を思いつきで決めると、効果的なOJTができません。
3 OJTプログラムの原則
定型的な規格にそった作業や操作を習得するとき、何が基礎で何が発展となるものか、何が必須で何が付随したものなのか…ということを検討することが前提になります。こうした必要項目を組み立てて標準的な使用法を構築したのが操作マニュアルです。
操作マニュアルに基づいて、OJTを行う項目や実施の方法を決めていくことになります。少なくとも、それが原則です。あえてOJTを行う必要がない分野は習得状況を確認します。たとえ簡単でも間違っては困る項目の場合、習得の確認が必須です。
操作マニュアルだけでは習得が効率的でないもの、習得に不安が残るものを中心にOJT実施の検討項目になります。業務のように正解がないものなら、OJTにも試行錯誤が入り込みますが、操作や共通の基本作業の場合、満点の習得が求められます。
習得の標準コースを決め、個別の調整をしていくのがOJTです。OJTマニュアルの作成講座にいらした方の中にも、定型化した業務だから画一的なマニュアルができるはずだと思っていた人がいました。誰にでも同じように教えるのは非効率です。
OJTは個人の違いが見えてこそ、効果が上がります。共通の操作を操作マニュアルに記述したとしても、その習得には個人差が出るのが当然です。個人の違いをチェックしながら、臨機応変の指導ができるように、柔軟なプログラムを作ることが求められます。