■制度設計について:基本的な考え方

 

1 早くも失敗しそうな制度

最近、コンプライアンスに関連した問題が話題になっています。様々な組織で、コンプライアンスに関するルール作りがなされているのかもしれません。今後どうなりますという連絡をもらった人も多いはずです。しかし早くも失敗しそうな制度もあります。

最近ご案内いただいたものの中に、コンプライアンスとは何かを説明して、こういうルールですというだけの通知しかないものがありました。べつにめずらしくもないでしょう。何もしないわけにはいかないので、ひとまず検討してみた程度かもしれません。

何か起きた場合に、どう対応するのか、ある程度の説明があればよいのですが、何かありましたら、ご質問・ご連絡はこちらへと、メールアドレスが示されるだけでは、何も解決しそうにありません。実際に問題があるケースでも、これでは連絡などしないでしょう。

 

2 「窓口をどう決めていますか?」

コンプライアンスの問題に限らず、何も報告がないことと、何も問題がないことが同一視される風潮があります。自分たちの組織に何か問題でもあるのですか、不満があるなら言ってくださいと声高に主張する組織では、問題があっても、それが表に出てきません。

そうでなくても、知らないうちに問題が表に出ない制度を作っていることがあります。気をつけないといけません。問題があったときに、「誰が・どういうことをしていて」、それによって「誰が・どんな目にあったか」という点を明らかにする制度が必要です。

制度がうまくいくかどうかを確認するために、最初にお聞きすることは、「窓口をどう決めていますか?」ということです。問題があったら、それを報告したり指摘しやすい雰囲気を作っておく必要があります。いい窓口があれば、その制度には期待できます。

 

3 制度設計の基本的な考え方

どんな問題であっても、ひどい状況になる前に、予防的に話をしてもらうことが、一番効果があります。話しやすい雰囲気のある組織なら、ちょっとした行き違いや、誤解される振る舞いが早いうちから是正されます。早い段階なら、注意するのも気が楽です。

話をする人にとって、一番話しやすい状況が選べることがとても重要になります。制度を作るときに、窓口を固定的にしないということです。固定的にしてしまうと、どうしても話しにくいと感じる人が出てきます。あとから真相が出てくるのでは困るのです。

窓口を工夫したら、次に、何を目的に聞き取りをしますかと確認してみます。かなりの方が、真相解明だとおっしゃるのです。しかし違うのではないでしょうか。残念ながら真相は、たいていわからないものです。真相かどうか、最後まで判断できません。

コンプライアンスの問題にしても他の問題にしても、目的となるのは、気持ちよく活動できる環境を作ることです。そのために何ができるかを考えていき、それがヒントになって、新たな制度の設計に結びつきます。これが制度設計の基本的な考え方です。

 

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