1 広義の「業務マニュアル」の一つ
OJT教育用マニュアル講座を行ってきました。この講座で一番問題になるのは「OJT教育用マニュアル」という名称です。OJT用にマニュアルがあるのはたしかですが、必ずしもOJT用マニュアルと呼ばれているわけではありません。共通名称がないのです。
OJTにしろ、社員教育にしろ、自社で行う能力がなくては困ります。当然ですが、自社で教育のノウハウを持たなくてはいけません。そこで実際に行ったOJTや教育を検証する必要が出てきます。検証するには記録が必要だからそれを残すという単純な話です。
OJTにしろ教育にしろ、積み重ねが大きな成果をあげます。成果を測定していかなくてはいけないということは、皆さん解っていることです。そのためにどういうプログラムや教え方が効果的なのか、知らなくてはなりません。その基本ツールということです。
効果のあるOJTや社員教育がなされたら、それを学んで次に生かすことが求められます。そのためにマニュアル化が必要なのです。マニュアル化しておくことで、組織の運営が大きく違ってきます。広義の「業務マニュアル」の一つというべきものです。
2 短時間で作れるOJT・教育用マニュアル
OJT・教育用マニュアルの特徴の一つは、利用者が指導者に限られるという点でしょう。参加者が参照するものではありません。教育をする側が実践のときに、「誰に向けて、何を、どう教えたらよいか」についての指針にするものです。
指導者の参照用のマニュアルだとしたら、指導する内容を確認する程度で、内容の詳細を記述する必要はありません。指導者は教える内容がわかっているのが前提ですから、概要を記せば十分です。そうなると分量が少なくて十分だということになります。
OJT・教育用マニュアルは、教える内容を知っている人が使用する小さな文書です。わかった内容を簡潔に記すだけですから、実力のある人ならすぐに作れます。逆に言うと、どういう内容が効果的か、どう教えるのがよいかとわかるのが実力だということです。
3 成果を上げる手法の標準化
仕事のできる人に対して、何かを教えるというのはほとんど無理でしょう。そういう場合、どうしたらよいでしょうか。この点を知っているかどうかが、組織にとって大きな違いになります。実際のところ、組織ごとの差は信じられないくらい大きなものです。
ドラッカーは『未来企業』で、[花形セールスマンの生産性をさらに向上させる最善の道は、セールスマン大会で成功の秘訣を語らせることである]と記しています。自分ができることでも、人に効果的に教えようとしたら、簡単なことではありません。
成果を上げるために、どういう仕組みを作っていったらよいのか、全体の研修をどう構築したらよいのか、こういうことを考えることになります。これは、そのままビジネスを考えていると言えるでしょう。視点が広がり、全体を考えることになります。
圧倒的な人だけができて真似できなかったら、[考え出されたものとは言えない。それは単に行われていたというにすぎない](ドラッカー『マネジメント・フロンティア』)ということです。成果を上げるための手法を示す必要があります。その教育が必要です。
マニュアル作成の目的は、学習する組織にすることにあります。成果を上げる手法を標準化するための重要な手段です。組織全体のレベルアップとリーダー養成に必要不可欠の道具といえます。作成者は優れたリーダーになるつもりで作成すべきでしょう。