1 簡潔に迅速に書くことが必要
文書を書くことが苦手だという人がたくさんいます。残念ながら、こうした話を聞いてももはや驚かなくなりました。学校での作文の訓練が重視されなくなり、本を読む量も減ってきています。これで書く能力が上がったら逆に不思議かもしれません。
一方、文書を簡潔に迅速に書く必要性は高まっています。口頭で伝えるのは手間がかかって正確性の面でも不安があります。文書に書いてもらえば共有もできますし、処理も早いでしょう。実際にはそれが簡単に出来なくてストレスを感じる人がたくさんいます。
訓練を早いうちにしてしまえばよいのですが、現実にはうまくいっていません。研修の状況などを見ても、全員にはもはや無理、リーダー候補の人だけでも訓練してという感じがあります。問題は、その人たちへの上司の期待が不明確で現実的でないほど高い点です。
2 3つのパートからなる標準的な書き方
文書の作成で目標とすべき水準となるのは、言うべきことが正確に伝わる文書が作れるということでしょう。従来よりも短時間で、迅速に作れるようになれば目標達成です。様々な分野の専門職の人が、文書作成に時間をとられすぎるのは、もったいないことです。
文書訓練をする場合、研修を一回受けただけでは画期的な成果は期待できません。標準的な書き方を知ったうえで、定期的にチェックしていくことが必要になります。研修に対して期待を持ってくださるリーダーの人たちに申し上げるのも、この点です。
標準的な書き方とは、3つのパートに分けて書いていくものです。最初に結論や一番訴えたい内容を持ってきて、次にそこに理由づけや経過などの説明を加え、最後に今後の展望や意義の確認など、まとめをつけていきます。この形式なら、そんなに苦労しません。
3 誰に・何を・どう書くか
文書を作成する場合、「誰に向けて書くのか」「何を書くのか」「どういう形式で書くのか」ということが問題になります。「誰に」を決め、その人たちに向けて「何を」書くのかを2~3行にまとめること。あとは形式にそって書いていけばよいことになります。
形式とは、3つのパートに分けたものでした。最初のパートに、大切なことや結論にあたるものを書きます。その次のパートに、理由づけや背景説明などのポイントとなる内容を記述していけば、最後のパートのまとめは自然に書けるようになるはずです。
A4に一枚二枚の簡潔な文書が迅速に作れるようになれば、もっと大きな文書でも対応できるようになります。大切なのは、経緯を再編成することです。「こんなことがあって、こんな経緯であった、これを評価すると…」という流れのままでは簡潔になりません。
メモに思いつくものを書いて、その中から必要事項を選んで、それを数行にまとめましょう。それを最初のパートに書いていくことになります。この数行の文が「リード」と呼ばれる部分です。これがまとめられれば、文書作成の最大関門を越えたことになります。