■業務と記述:業務マニュアルについて

     

1 業務マニュアルの効果

業務マニュアルを適切に作ったら確実に成果が上がります。そんな風にお話したことがありました。業務を記述することによって、業務が見えてきますから、客観化できるようになります。そうなると、いくつもの改善点に気づくことになるはずです。

現状をそのまま記述しただけで、業務マニュアルが完成ということにはなりません。記述の苦労と、仕組みを整備することは一体的な作業になります。したがって、業務マニュアルを適切に作れるようになったら、業務がより一層見えるようになるということです。

しかしこういう言い方は、必ずしも正確とは言い切れません。業務マニュアルという言葉の概念をどう捉えるかに依存するからです。業務マニュアルという言葉の概念が、記述されたマニュアル文書というのなら、以上は正しいと言ってよいと思います。

     

2 憲法概念と業務マニュアルの概念

業務マニュアルという言葉を、どう定義するかは簡単なことではなさそうです。業務が反復され、継続的に実施されているということは、業務の仕組みが出来ていることになります。業務の仕組みを作ることが業務マニュアルであるということも言えるでしょう。

この場合、業務を継続して遂行している組織には、業務マニュアルがあるということになります。憲法典とは別に、すべての国には憲法があるというのと同じことです。イギリスには憲法典がありません。しかしすべての主権国家には、実質的な憲法があるのです。

業務が継続的に遂行されているならば、業務の仕組みが出来ているといってよいでしょう。そうなると、業務マニュアルは記述されていなくても、業務マニュアルがあるということは可能です。業務マニュアルの概念は多義的だということになります。

    

3 業務の構築と記述の関係

ここでは憲法を憲法典という概念でとらえるように、業務マニュアルを文書としての業務マニュアルだという前提で考えてみましょう。そうなると、最初に書いたように、適切な記述が出来るならば、必ず成果が上がるということになります。

ポイントは記述の仕方だということです。業務をどのように記述するかということが最大の問題になります。成果が上がるかどうかは、業務が適切に記述できたらという条件つきのことです。そのため記述とはどんな概念なのかが問われることになります。

第一に、一文一文がシンプルでわかりやすく記述されていることが条件です。第二に、仕組みの構成が実践的で効率的な形式に組み立てられていることが条件です。問われるのは、センテンスの記述と、仕組みを表現するときの文章構成ということになります。

このことは単純明快な作業にすることと、合理的・実践的なプロセスを作ることと、類似のものです。適切な記述をするには、記述する内容自体を適切化することが必要になります。業務の構築には記述が不可欠であり、また効果的だということです。

      

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