1 参考になるドラッカーの執筆方法
何とか締め切りまでにテキストを提出しました。毎回、かなりの改定をするので、それなりに苦労しています。今回は、全面的な見直しですので、一度完全に作り直してから、前のものとのすり合わせをすることになりました。全体的な統一性を持たせるためです。
新たなテキストに、いままでのテキストの内容を組み込んでいく作業になりました。今回は、まずまずの出来かなという気持ちもありますが、講義をやってみないことにはわかりません。それにしても、効率的とは到底言えない方法でテキストを作りました。
そういえば、と思い出します。『知の巨人 ドラッカー自伝』にドラッカーの執筆方法が書かれていたはずです。確認してみると、最初の部分にありました。ドラッカーの方法をそのまま採用することは無理だと思います。しかし参考になりそうです。
2 手書きで全体像を描くのが始まり
ドラッカーは亡くなる2005年2月に、日経新聞の「私の履歴書」に登場しています。6回の「合計十時間以上」のインタビューをもとに、訳者の牧野洋が「インタビューでのこぼれ話や背景説明などを盛り込んだ解説を加え」て本になりました(pp..12-15)。
ドラッカーは[長年の経験からかなりのスピードで原稿を仕上げる技術を身につけている]と語っています。[まず手書きで全体像を描き、それをもとに口述で考えをテープに録音する。次にタイプライターで初稿を書く]という方法です(p.24)。
[通常は初稿と第二稿は捨て、第三稿で完成。要は、第三稿まで手書き、口述、タイプの繰り返しだ。これが一番速い]とのこと(p.24)。解説に[口述で自分の考えを詳細にテープに録音]し、アシスタントに[タイプで打ち出してもら]うとあります(p.33)。
3 書き直すうちに結論が変わる
ドラッカーの執筆法で注目すべきことは、最初に全体像を作ること、それをもとに「手書き・口述・タイプ」と、執筆の手段を変えながら、何度も書き直すことです。解説者が言うように[何度も書き直すことで自分の考えの完成度が高まる](p.33)ように見えます。
ドラッカーの語るところによると、[私の場合、原稿を書き直すにつれて、結論がいつも当初とは違ったものになる]とのこと(p.33)。全体の構想があって、そこにいくつもの思いつきが加わっていき、その後、やっと初稿で考えが「見える化」されます。
自分の考えが見えるようになると、それを基礎にして考えが洗練されていく…ということなのかもしれません。その結果、結論が違ったものになる可能性はあるでしょう。しかし、いつも初稿と違ったものになるというのは、かなり異色な感じがします。
ドラッカーの執筆法は、結論が見えるまで書かないというエマニュエル・トッドの方法とは対照的なものです。私たちは、たいていドラッカーとトッドの間のどこかに位置していて、どっちか寄りになります。私は、ドラッカー寄りだと改めて思いました。
▼参考ブログ: 思考と執筆:『エマニュエル・トッドの思考地図』から
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